2019年モズク市場規模推計 232億4000万円 (本誌推計)

2019年オキナワモズク生産量からモズク最終商品の市場規模を推定しよう。これはあくまでも本誌の暫定的な試算で、今後はより精度の高い推計値を求めて行く。
カップモズク大手・カネリョウ海藻の「味付モズク黒酢」を近くのサンエーで購入し、市場規模推計に着手した。
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同商品は、3連タイプのカップモズクで、その固形量を量った。
計量方法は、カップの中のモズクをザルで取り、3分間調味液を切る。残った固形量を量ると、1個当たり固形量は25グラムで、3連の合計固形量は75グラムだった。
1カップの内容量は60グラムだから、モズクは41.7%入ってる。
これらのことから、以下のように整理できる。
サンエーの売り出し価格は128円(税別)。
モズク1グラム当たり1.7円。
すると、10グラム17円、
100グラム170円、
1キログラム当たり1700円、
となる。
本誌が以前構築したモズク養殖業産業連関表(※注1)により、沖縄県から他府県加工業者へ原料として出荷されるオキナワモズクは県内生産量の90%だということが分かっている(2011年当時の調査で、その後、調査していないが、ここでは他府県移出比率が同じだと仮定する)。
モズクパック商品加工業の原料投入出荷比率(※2)は県内加工業の場合、6.78倍であり、その比率を他府県加工業者へも適用すると、モズク商品の小売市場価格は次の式を適用できる。
1万5190トン×90%×1700円=23240700000円 =232億4070万円
これは小売市場価格で、これまでにシンクタンクや水産専門紙などが公表していた数字とおおよその規模は似通っている(※3)。
小売市場規模からモズク加工業の工場出荷規模を類推すると、
232億4070万円×0.5(食品スーパー0.33+1、2次問屋0.17をの場合)
=116億2035万円
工場出荷段階での市場規模116億2035万円となったが、食品スーパー側、1、2次問屋側の粗利により、モズク加工側の規模は大きく変動する。
今回はカネリョウ海藻のカップモズクで、たった1回の実査による推計であるため多少の誤差は含まれている。他府県での定期的な複数のサンプル調査が必要だろう。
※注1 本誌編集長の上原政幸は「モズク養殖業分析用産業連関表の構築とその潜在市場の分析、並びに政策的含意の研究」を2011年執筆し、同年と、2013年の地域漁業学会で口頭発表した。
※注2 上掲の論文により、沖縄県内モズク加工場の投下原料モズク量→工場出荷額が判明した。それによると係数は6.78である。要するに原料1を工場に投入すると、6.78のモズク加工品を生産する。今回はこの県内2次加工業の数値を本土加工業者へも適用した。本稿ではカネリョウ海藻の商品の、沖縄県のサンエーでの売り出し価格を適用しているが、この価格を通常価格に変更し、設定し直すと、係数は6.78よりも大きくなり、市場規模も増大すると考えられる。また、他府県の場合、沖縄県での係数よりも若干高くなる見込み。
※注3 これまで、シンクタンク、水産専門紙などからモズク市場規模について少なからず発表されていた。しかし、いずれも算出根拠があいまいで、主要モズク加工業者からの聞き取りが主であるなど、論拠に問題が多くあったものがほとんどだった。筆者上原も以前新聞社在籍時、主要加工業者の売上高をベースにし、それらを積算する方法で工場出荷額を推計した経験がある。
本誌では、計量経済学の観点から、論拠を明確にし、再現性を重視する算出方法を目指した。今後、精度の高いKSP-POSデータを基にしたオキナワモズク市場規模算出を実施する予定である。